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健康だけが取り柄と思っていたごく普通の主婦の私が、ある日突然原因不明の痛みを発症、10年間の痛みとの戦いの後、二度にわたる手術とリハビリにより痛みとの完全なる決別を果たしました。手術を迷っている方、同じ痛みに苦しむ方の参考になれば幸いです。

そもそも、こんな状態を引き起こした元凶こそ、50年以上も前、乳児期の臼蓋形成不全という病気でした。

<プロフィール>

【ペンネーム】MОKО

【年齢(性別)】57歳(女性)

【発症年齢】40歳

【出身】東京都

【職業】主婦

1)臼蓋形成不全とは先天的な股関節の異常

臼蓋形成不全とは乳児によくある先天的な股関節の異常のことで、大抵は乳児健診で発見され、適切な治療を受けることになるのですが、見落とされることも多く、私の場合もそうでした。試しに母に、赤ちゃんの頃私の股関節に異常があったことを知っていたか聞いてみたところ、そんなはずはないとすごい剣幕で怒られました。

臼蓋とは聞きなれない言葉ですが、股関節の骨盤側の窪んでいる部分のことで、そこに大腿骨の丸い先端がすっぽりと嵌まることで股関節の多方向にわたる滑らかな動きが可能になります。この臼蓋が大腿骨をすっぽり覆うことができない、窪みの浅い状態のまま成長しない、これが臼蓋形成不全という病気です。

【1】臼蓋形成不全と診断されたら

臼蓋形成不全だからってすぐに生活に支障があるわけではありません。股関節脱臼でも起こさない限り痛みなどもないようで、普通に生活できます。反対に、診断された場合実は大変な治療が行われていました。生後数か月の赤ちゃんの股関節をギプスや装具で固定するというものです。想像するだけで恐ろしいと思いませんか?診断されなくて逆に幸運だったと思うくらいです。

【2】臼蓋形成不全から変形性股関節症への移行

臼蓋形成不全の人は将来的に変形性股関節症に移行する可能性が高いようです。異常な臼蓋は大腿骨の動きを受け止めきれず安定しないので、通常より軟骨が余計に擦り減ったり骨の変形が起こりやすくなるようです。ただ個人差はあり、その移行は極めてゆっくりと知らぬ間に起こります。私の場合は、40年後のことでした。

2)臼蓋形成不全から変形性股関節症を発症

【1】変形性股関節症の症状

40歳を過ぎた頃から、大好きなテニスなどの激しい運動をすると股関節が痛み、しばらく痛みがひかないことがありました。最初の頃は痛みと痛みの間隔が半年以上あいていたのが、5年も経つとだんだん頻繁に痛みが出るようになり、ついには歩くたびに痛むようになりました。痛みで眠れないこともありました。

一番初めに痛み始めたのは右股関節だったか左股関節だったか?記憶は定かではありませんが、両股関節の痛みでまともな歩き方もできなくなり、自転車をこぐだけでもきつくなってきました。湿布を貼りづらい部分でもあり、塗るタイプの湿布薬が唯一の対処法でした。人目も気になり、精神的にもつらい日々でした。

【2】股関節の痛みを抑えるためにしたこと

(1)グルコサミンの服用

痛みの間隔があいていた頃、関節痛によく効くと当時から流行っていたグルコサミンをのみ始めました。しばらくすると嘘のように痛みが消え、普段の生活にもどれました。痛みが出るとのむの繰り返しでしたが、効果があると信じ切っていました。実際は医学的効果はあまり認められていないようです。

(2)マッサージ

評判の良い整体治療院へ週1回マッサージに通いました。施術直後は良かったものの、時間が経つと元通りになり、根本的治療とは程遠いものでした。

(3)電気マッサージ

接骨院で電気治療をしました。これもその場限りの自己満足的なものでした。

(4)整形外科の治療を受けるという選択肢

整形外科はレントゲンを撮り、症状について説明してくれるものの、痛みを取るための治療はあまりしてくれません。以前痛みを訴えても何もしてくれず、無駄足を踏んだ苦い経験から、整形外科に対する不信感があり行く気持ちは全くありませんでした。

【3】変形性股関節症の診断

ここまでの痛みがありながら、手術の可能性など全く考えていなかった私ですが、大腿骨骨折をし、手術によって回復した親族を見舞ったことで、がらりと違う考えに思い至ります。インターネットで似たような症例を探して、変形性股関節症という病名を知ると、早速友人に紹介された整形外科医院に電話をかけました。県内でも評判のその病院で、診察の予約が取れたのは、3カ月後でした。

初めての診察は簡単なものでした。レントゲンを撮り、それを見ながら担当医の先生の説明があっただけです。でも初対面から先生の印象は良く、じっくり治療に取り組めそうな期待感がありました。診断はやはり、変形性股関節症でした。

(1)レントゲンの衝撃映像

私の股関節は実際ひどい状態でした。特に右股関節は大腿骨の先端(骨頭)からとげのような尖ったもの(骨棘)が飛び出し、そのせいで臼蓋に穴まで開いています。痛みを和らげてくれるはずのクッションとなる軟骨は両方ともほとんどありませんでした。それら全てが歩くたびに激痛を起こす原因になっていたのです。典型的な変形性股関節症でした。

人体の、それも骨のような硬いものが勝手に変形するなんてこと、実際に見るまで信じられませんでした。長年にわたって安定しない股関節をカバーするうちに軟骨が擦り減り、痛む関節の動きをセーブするために骨頭が変形・・・こんな体内からの悲鳴に全く気付かずにいた自分の鈍さには呆れるばかりでした。

(2)痛みを取る方法はあるのか

痛みの原因を取り除く方法は、人工股関節を手術で入れるしかありませんでした。自然に回復、増量することのない軟骨は、一度擦り減ったら元には戻せません。また、変形してしまった大腿骨の骨頭も切り取って金属の骨頭を差し込むしかなく、穴の開いてしまった臼蓋も削り取って金属製の臼蓋を骨盤に取り付けるしかないのです(人工股関節置換術)。

(3)手術には大きな問題点が

唯一の解決策と言える手術にも全く問題が無いとは言えません。人工股関節の寿命は当時から15年程度と言われており、50代での手術だと存命中に再手術の可能性が高いということです。担当医もその点を考慮し、5年~10年後、できるだけ遅くの手術が望ましいと言いました。でも、その時点で、私には手術以外の選択肢はありませんでした。というのも、手術をしない場合の治療法を尋ねたところ、我慢しつつ様子を見ること以外無い、とのことだったからです。もうこれ以上痛みを我慢し続けるのは嫌でした。その場で手術を申し込みました。さらに4カ月先まで待たねばなりませんでした。

3)変形性股関節症の手術(人工股関節置換法)と術後のリハビリ

【1】手術までの流れ

手術までに行われた検査、準備は、次のようなものでした。

・麻酔科診察

・内科診察、血液検査

・骨粗しょう症検査

・MRI検査

・輸血用自己血採取(2回)

【2】入院・そして人工股関節置換術の手術

2時間ほどの手術で、右太ももの横にメスを入れ、臼蓋、大腿骨骨頭が金属性のものに付け替えられました。特に問題もなく1時間ほどで目覚めました。

【3】術後の経過は順調すぎるほど順調でした。

翌日にはリハビリが始まり、3日後にはチューブが外されて身軽になりました。と言っても満足に歩けるには少しリハビリが必要でした。ただありがたかったのは、痛み止めが必要なほどの痛みがほとんど無かったことです。退院時に頂いた痛み止めは、その後3年間使うこともありませんでした。それまでの痛みに比べたら、手術後の痛みなんて軽いと思えたからです。

おトイレ解禁になって感じたのは、ここの整形外科のトイレは一般のトイレより便座の位置が高くなっており、股関節患者にはそれが実にありがたい配慮だったということです。椅子やベッドなど色々なところに細やかな配慮が感じられる病院でした。各人に与えられる歩行器を使えるようになると、移動の負担も軽くできました。

【4】股関節の手術によりできなくなること・気を付けるべきこと

股関節の手術後は、可動域が狭くなったり、ある方向に(手術方法によって違いますが、私の場合は内側に)動かすことで関節が外れやすくなるため、夜間睡眠中はクッションを股に挟むなど寝相に気を付けなくてはいけません。一番恐ろしいのは、この脱臼だそうです。想像を絶する痛みがあり、再手術を要するとのことで、動きには特に神経を遣いました。また、90度以下の角度に曲げてもいけません。靴下をはいたり、足の爪を切ったりすることは当分の間かなり難しくなります。

【5】入院を快適にするために役立つ物たち

手術直後はほとんど身動きが取れなくなるため、100円ショップのマジックハンドは必須です。ベッドの端にあるものや、落としたものを拾うのに便利です。シャワー解禁後の着替えの時にも役立ちました。100円ショップの携帯扇風機とうちわは夏の入院の必需品でした。手術直後のリカバリー室での眠れぬ一夜に特に役立ちました。

【6】リハビリの必要性を実感しました

手術翌日から始まったリハビリは、本当に緻密に計算された時間でした。歪んだひどい歩き方が習慣になっているせいで、普通に歩けるようになるまで、かなりの訓練を要しました。退院後もはじめは週1回、最後は1月に1回の割合で1年間通院しました。お尻の後ろの中臀筋の筋力が特に落ちていたようです。横になり、足を斜め後方に上げる体操が効果的ですが、きつかったです。

右足の手術から半年間は左右の足の長さが違ってしまったことによる歩きにくさもあり、装具(かかとの下に入れるタイプの中敷)で長さを補っていました。屋内では片足だけにスリッパを履くとバランスが取れました。無事左足の手術が済んだ後、足の長さが揃ったときは本当にうれしかったです。両股関節手術の場合、あまり時間をあけない方がいいようです。

【7】病院食は負担なしの最高のダイエット食

栄養とカロリーが計算された病院食はダイエットに最適でした。数々のダイエットに失敗してきた私も、4週間弱で2キロのダイエットに成功しました。患者間のストレスのせいもあったかもしれませんが、適正体重に近づくことができました。もちろん間食は我慢です。

4)退院の目安と体の状態・・ここまでできれば退院できる

手術から3週間前後、杖を使っての歩行がスムーズにできるようになり、階段歩行やトイレ、シャワーを浴びるなどの基本的なことができるるようになるのが、退院の目安です。私は4週間弱で退院できました。

退院前には様子見の外泊があり、予行演習はできていたものの、荒波に放り出されたような心細さを感じました。家族は色々気遣ってくれ、食事の支度、片付け、洗濯など家事を分担してくれましたが、設備が整っていない家での生活は想像以上に大変でした。

5)手術・入院にかかる費用は?限度額適用認定証の取得

【1】治療費

入院、手術その他にかかった費用は、2回合わせて約50万円程です。本来は1回に付き100万円を超える金額をいったん納め後日返還となるようですが、入院前に市役所で限度額適用認定証を申請し取得しておくことで、限度額(収入により金額が違います)以内の支払いで済みます。本当にありがたかったです。

【2】保険

生命保険に入っていたので、保険金も受け取ることが出来ました。入院費用をほとんど賄えました。希望があれば、身体障害者手帳を取得できます(4級または5級)。

6)退院後に自宅や出先で気を付ける事とは?

【1】思いがけない敵・規格の高さと快適な高さとのギャップ

退院後、便座の高さや椅子の高さ、ベッドの高さなど低すぎるものには慣れるまで時間がかかりました。あちこちに段差のある自宅では、慎重に歩きました。転倒が一番怖いからです。転び方によっては骨にダメージがきて再手術の可能性もあります。

【2】食生活

骨粗しょう症にならないよう食生活ではカルシウムを摂り、自転車こぎやプールでの歩行など負担の少ない運動を心がけます。

【3】生活習慣

股関節を内側に曲げすぎて脱臼しないように気を付け、90度以上屈まないなど注意事項を守ります。なるべく体重を増やさないようにすることは、股関節の負担を減らすために大切です。私はだいぶ増えてしまい、いつもダイエット中です。

7)臼蓋形成不全の治療&手術の経験を経て今思うこと

【1】手術後4年が経過した今

発症後10年間のつらい時期を過ごした後、手術、リハビリで劇的に回復し、4年が経ちました。4年前の痛みをそのままにして手術を延期していたらと思うとぞっとします。今は痛みも全く無く、生活に支障もありません。

また、担当医の先生には本当に感謝しています。最初の診察から手術、健診まで常に完璧な対応をしてくださいました。両股関節の傷跡もずいぶん薄くなってきましたが、綺麗に揃ったその跡を見るたびに、感謝の気持ちを新たにしています。信頼できる医師との出会いは最重要事項です。納得のいくまで探すことで、どんな結果にも納得できるのだと思います。

【2】手術の時期は大切

同室の患者さんは、1度目は70歳以上の方ばかりで、回復もリハビリも私に比べ格段に遅く、痛みも長引いているようでした。50代ながら最年少だった私は若いから元気だねえといつも言われていました。再手術のリスクがあっても早いうちに手術したことは間違っていなかったと自信を持って言えます。痛みのない生活を手に入れることは精神的にも大切なことですが、手術をするか否か、決めるのは自分自身です。十分に考えて納得できる道を選んでいただきたいと思います。

8)股関節の病気を抱えた方へのメッセージ

臼蓋形成不全による変形性股関節症は、決して珍しい病気ではありません。老化によるものと違い若くても起こり得る病気なのです。異常に気付いたら、1日でも早い対策が必要です。痛みが慢性化するまでにできることはたくさんあります。激しい運動を避け、体重を減らし、股関節の負担となるようなことを避ける、

これだけでも発症をかなり遅らせることができます。でも、発症してしまったら信頼できる医師を探し、手術を含め最良の方法を考えることです。手術は最後の手段かもしれませんが、最高の手段でもあると私は実体験から信じています。

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