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私は35歳の時、肺結核を患いました。病名を聞いたときは「まさか」の気持ちでした。昔の病というイメージながら、近年再び広がり警戒されている感染症・結核。私の治癒までの体験が、少しでも似た境遇にある皆様のお役に立てれば幸いです。

【ペンネーム】Y・O

【年齢】50代(男)

【発症年齢】35歳

【治療期間】約7カ月

【治療状況】完治

【出身】福岡県

【職業】会社員

1)突然の発症!病名に不意打ち

【1】会社の健康診断で発覚

私は当時も現在も同じ東京都内の企業に勤めています。その年も、毎年春に会社が実施する定期の健康診断をいつも通り受診しました。健診結果は約1カ月後に各社員に通知されます。

それまで毎年、若干飲酒量が多いため肝機能が低下しているほかは、特段の異常はみられず、通知には「飲酒をなるべく控えるように」と注意書きがある程度でした。ところがその年は通知を受け取る前に突然、健診を担当する社内の部署から直接電話を受けました。

担当者に「精密検査の必要があります。会社かかりつけの産業医を受診してください」と告げられた私は、訝しく思いつつも、早速会社近くの産業医の病院を受診しました。診察室で向かい合った医師は、健診で撮影した胸部のX線写真をかざしながら「うーん、これは肺結核だね」と病名を私に告げたのです。

【2】信じられず暗澹

結核・・確かに、明治や大正時代を描いた小説やドラマの中で、当時の人が苦しんでいるシーンを見聞きしたことはありますが、まさかこの現代に、しかも自分がなぜ…。自分の周りにも患者さんはおらず接触した覚えもありません。一体どこで感染したのか。にわかには信じられない思いでした。自覚症状もまったくありません。しかし医師は当面は仕事を休み、投薬治療が必要だといいます。暗澹たる気持ちになりました。

2)「昔の病」ではない肺結核

【1】「肺結核」とは

肺結核とは、結核菌という細菌が空気感染によって肺の中に入り、増殖することによって起こる病気です。発症した場合は咳や発熱が長く続くことがあるほか、痩せたり、肺以外の臓器に移る可能性もあります。

昔は「死の病」と恐れられましたが、現在は優れた「抗結核薬」が開発され、症状も軽く完治できるようになりました。しかし病状を放置したり適切に治療しないと死に至る場合もある侮れない病気です。日本は国際的にも患者数が多い「結核中進国」とされており、感染防止などの対策の必要が叫ばれています。

【2】考えられる原因は

結核は感染したからといって必ずしも発症する病ではありません。体の免疫力によって菌の増殖が抑えられるからです。しかし幼児や高齢者など免疫力が低い場合には発症しやすいとされます。

では、年代的に相当体力や免疫が強いはずの30代男性が、なぜ発症したのでしょうか。この点は思い当たる節がありました。当時私は交代制シフトの宿直勤務がある職場に異動して間もないころでした。週1度の宿直勤務のほか、朝5時の早朝出勤や午前2時までの夜勤など不規則な勤務をこなす日々。

新しい職場で慣れない仕事も多く、ミスをしては周囲から苦言を呈されるなどストレスも溜まっていました。そのためか風邪をよく引いたり、口内炎やものもらいがなかなか直らないなど免疫力が落ちる兆候があったのです。これが何らかのきっかけで発病を促した可能性はあると考えています。

資料を記入している医師

3)病院を3度替わり専門医の元へ

【1】初めは自宅でも「隔離状態」

会社の上司は感染の広がりを恐れ、出勤はせずにそのままただちに自宅療養に入るよう指示しました。職場では、日頃私と会話したり接触がある社員について、感染がないか病院で再検査を受けるよう要請があったと後に聞きました。結果的には感染者はありませんでした。

医師の指導により、自宅でも部屋に隔離状態です。部屋を出る際には病院から渡された肺結核専用のマスクを常に着ける必要があります。食事も入浴も、家族が近づかないよう警戒しながらこそこそやらなくてはなりません。そのうち精神的ショックも手伝ってか、39度近い高熱が出始め、寝込んでしまいました。何となく咳が激しく息も苦しくなり、「ああ、ついに症状が出たのか」と気持ちは落ち込む一方でした。

【2】まさかの病名信じられず…

症状がつらいことに加え、どうしても初診の結果に納得がいかず、この際セカンドオピニオンを聞こうと、私は近所で有名な国立の総合病院をあらためて受診することにしました。

同病院の呼吸器内科を訪ねると、再び胸部のX線写真を撮影。ツベルクリン反応の検査も行うと、腕にはみるみる大きな赤い隆起ができました。若手医師は写真を私に見せながら「肺上部に影があり結核の疑いがあります。少し肺炎にもなりかかってますね。

結核とは関係なさそうですが」と言いました。ただ「確定的に診断するには、私よりも専門医を受診したほうがよいでしょう」と付け加えました。医師のかつての恩師が新宿の病院にいるとのことで、紹介状を書いてもらうことになりました。 

【3】専門医の紹介を受ける

肺結核の場合、菌を外部に排出している患者は、周りへの感染を防ぐため専門病院に入院する必要があります。排菌が止まるまで2カ月ほどかかるとされ、仕事や社会生活に大変な支障になります。その頃私が一番恐れたのは入院を余儀なくされることでした。

翌日、私は紹介状を持って新宿にある総合病院をたずねました。紹介された呼吸器内科の医長は、肺の感染症の専門医として医学会や関係者の間でも知られた先生でした。

まずは三たびの検査です。X線写真を再び撮影したほか、CTスキャンや喀痰検査を行いました。後日結果を聞きに再び受診すると先生ははっきり「肺結核です」と断言しました。しかし心配された外への排菌はなく、服薬治療だけで治るとのことでした。自覚症状がなく感染の恐れもないため、仕事に復帰してよいとの診断。ここで私もようやく息をつくことができました。

4)肺結核の治療の流れ

【1】接触者の調査・排菌の検査も

肺結核の検査はどのような流れで行われるのか、あらためて整理します。まずは肺のX線検査です。結核の病巣は白く写るので写真上で初期診断が行われます。結核の疑いが強まればCTスキャンで精密に肺を調べます。腕に結核菌を触れさせアレルギー反応で感染の有無を調べるツベルクリン反応検査も並行して行われ、これらを総合して診断が下されます。

さらに喀痰検査では菌が外部に排出されているかを調べます。排出が認められると患者はただちに入院となります。患者が日頃接触していた周囲にも感染がないか調べなければなりません。

【2】服薬治療は最低6カ月間

さて私は、その後半年にわたり通院治療を行うことになりました。治療はリファンピシン、ヒデラジドなどの「抗結核薬」を4種類、毎日服用することです。肺の中は酸素が豊富で温度も快適なため結核菌にとっては成長に絶好の場所です。なかなか死なないしぶとい菌でもあるため、複数の抗結核薬を使って長期間徹底的に叩く必要があります。

【3】絶対に途中でやめてはいけない!

医師からは「薬を飲んだり飲まなかったりすることは厳禁です。必ず処方通りきちんと毎日飲んで下さい」と強く指示されました。飲まない期間があると菌が薬に慣れてしまい、それ以後はその薬が効かなくなる「耐性菌」を生んでしまうからです。私も、飲み忘れがないように1日の決まった時刻に必ず飲むよう心がけ、鞄にも常時何日分かの薬を常備して、外出先などでも飲めるようにしていました。

通院は当初は毎週1回。その都度X線写真を撮り、薬剤の効果を確かめます。効くことが分かると通院間隔は徐々に2週間、1カ月、2カ月と開いていきました。そして6カ月目。X線写真をみた医師は「いいでしょう。終了です」と完治を告げました。

総合病院の廊下

5)周囲・家族に不安もたらす感染症

【1】完治後も毎年感じる不安

発症当初は家族には一番心配をかけました。当時は子供たちもまだ幼く、妻としては感染を非常に心配したでしょう。また職場も同じです。すぐに外部排菌がないことが分かったため事なきを得ましたが、入院が必要な患者さんの苦痛は察するに余りあります。

半年を経て治癒が確認され、私の治療は終了しました。その後はこれまで10数年異常はありませんが、肺の病巣の跡はいまだ残ったままです。毎年の健康診断でX線撮影をするたびに「上肺に古い病巣あり」と指摘されますが、その都度結核菌がいかにしぶといのか、しみじみ感じさせられます。

【2】公的な助成制度も利用可能

都合半年あまりに渡った治療ですが、検査などが重なっても治療費はさほどではありませんでした。結核は、感染症法の規定により公費負担(国や自治体の治療費補助)の対象でもあります。手続きは自治体によって異なるようですので、もしかかった場合は地元の保健所などに問い合わせることをお勧めします。私の場合も、こうした助成や入院しなかったこともあり実質的な費用負担はほとんどなかったといってよいかもしれません。

6)健康への日頃の心がけを大事に

これまで述べたように、結核は昔の病と侮れない感染症です。いまだ日本では年間1万7000人もの新患者が発生し、1800人もの方が亡くなっている重大な疾患といえます。しかし過剰に恐れることはありません。結核菌は体内では頑強でも、いったん外に出て日光に当たると数時間で死滅するほど、紫外線には弱い面もあります。

また感染したからといって必ずしも発症はしません。具体的にどんな理由、どういう条件で発症するのかは研究段階のようですが、予防に肝心なのが抵抗力を常に高めることなのは疑いありません。何の病気でも同じことですが、やはり基本は日頃から健康に留意した生活を送ること。

ストレスや疲れを溜めず、睡眠をとり体力作りをしっかりすること。外出時はマスクをしたり、うがい・手洗いを励行して風邪などの予防に努めること。こうしたごく普通の心がけが「大事を防ぐ」ことを、今回の体験を通じて私自身があらためて痛感しています。

まとめ

【1】まずは日頃の健康診断をきちんと受けましょう

【2】咳や風邪が長引くなら病院を受診しましょう

【3】結核は薬で治る病気です

【4】結核治療薬は忘れず、確実に飲み切りましょう 

【5】結核を昔の病と侮ってはいけません

【6】ストレス、疲れなど免疫力低下に注意しましょう

【7】予防の基本は日頃の健康づくりです

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