スポンサードリンク







「あなたはギランバレー症候群ですよ。」と言われたら、驚きませんか?どんな病気?治るの?これからどうなるの?そう思われる方が多いと思います。私もそうでした。当時18歳ラガーマンだった息子が、握力0になりました。今回は私の息子がかかったギランバレー症候群の症状から治療までの体験談をお伝えします。

<執筆者プロフィール>

 【ペンネーム】とんちゃん

 【出身】福岡県

 【職業】主婦

 <患者プロフィール>

 【病名】ギランバレー症候群

 【年齢】20歳(男)

 【発症年齢】18歳

1)ギランバレー症候群とはどんな病気?誰でもかかるの?

ギランバレー症候群は10万人に1~2人ほどの発症で、男女の発症比率はでは3:2で、若干男性の方が多いと言われています。20~30代が発症のピークですが、幼児期から老年期まで幅広く発症しています。神経に障害(指令を伝達しない)が発生して、足や手を動かすことができなくなります。急速に進行していくのも特徴です。

【1】当時の生活状況は?どんな人が病気になった?

発症した18歳の長男は家族と暮らしており、昼間は大学に通い、夕方はラグビー部で活動し、夜にはファーストフードでバイトをして21時には家に戻っていました。

良く寝る子で、大学は午後からの授業が多かった為、昼間まで寝ていることが多く規則正しい生活ではありませんでした。しかし、それは大学生ならではの自由な生活にすぎないものでした。ギランバレー症候群は生活スタイル自体は直接病気には関係なく、珍しいというだけで、どなたでもかかりうる可能性がある病気です。

 【2】原因って何?鳥刺しを食べたら可能性がある?

思い起こせば彼は発症の2週間前に、鳥刺しを食べていました。新鮮だから刺身でも大丈夫という認識でした。それが「カンピロバクター菌」に汚染されていたのかもしれません。

また、病院の先生によると、発症の2週間前に激しい咳をしていたことから、「免疫細胞が攻撃をしていた際に、どこかで信号を誤って運動神経細胞を攻撃するようになり、神経を上手く伝達させなくしてしまったことも考えられる」とのことでした。

実は、ギランバレー症候群の主な発症原因は、感染症の「カンピロバクター症」や「マイコプラズマ」などが因果関係がはっきりしているそうです。そして近年耳にする「ジカ熱」など、まだ調査段階の病気ですが多数の要因が考えられています。カンピロバクター菌は鳥刺しや火の通りが十分でない生肉などについています。カンピロバクター症は生の鶏肉からの一滴のしずくでも発症すると言われています。

つまり、彼の場合は鳥刺しを食べた際にカンピロバクター症をおこして、それが引き金となったことと、2週間の咳風邪による神経障害によりギランバレー症候群になったと考えられます。

 2)急速に自分の体を動かせなくなる恐怖!症状の進行は?

【1】症状の予兆や前兆症状

突然でした。彼は体力に自信があったのですが、1月の寒い時期に喘息をうたがうような咳風邪になりました。それが2週間続き、最初にふくらはぎの筋肉痛かな?と思うような重さを感じていました。次第にお箸が持てなくなり、体全体を動かすことが上手くできなくなってきました。飲み込んだり、話す力もありません。明らかにインフルエンザなどの倦怠感とは違っていました。ギランバレー症候群は風邪のような症状の1~2週間後に発症することが多いのも特徴なのだそうです。

【2】代表的な症状(本人の言葉)

(1)胸の筋肉が弱く感じ、話すことが辛いなと思うようになりました

咳がひどかったので最初はそのせいだと思っていましたが、声が小さくなり、肺に力をこめたつもりで大声で人を呼ぶのですが全く響きませんでした。

(2)筋肉を動かすことが自発的にできなくなりました

・歩行

上手く歩けずもつれ、足を前に出すことができなくなり、そして歩けないので階段はお尻をついて1段1段降りました。

・指

財布からお札を出す指でさえ、つまみあげることができなくなりました。そして、お箸が持てなくなり、ドアノブは両手の平をドアノブにこすりつけるように回して開けました。

【3】私から見た彼の症状

彼は力が全くはいらないので、今までどうやって声を出していたか?どうやって指に力を入れていたのか?どうやって歩くために足を出していたのか?と考えるほど自分の体の動かし方がわからなくなっていました。まして、ラガーマンです。自分の体を自由に操れないことに恐怖を感じつつも、男の子なので、こんなことで家族に助けを求めるべきではないし、そもそも声を出しづらくなったため一人で耐えていたのだそうです。

ただ、家族は心配は一切しておらず、咳で2週間も寝ていれば体力がなくなっても不思議ではないとしか思っていなかったのです。

【4】発症当時の対応

当初、咳がひどいせいで、内科を受診して肺炎や百日咳やマイコプラズマや結核の検査をしましたが、どれも陰性でした。しかし、咳風邪発症から2週間経過してもひどくなるばかりでした。そしてもう一度内科を受診しました。

病院で診察を受けている若い男性患者

 3)病院で実際に行われた検査・治療方法とは?

【1】最初の診断

最初は、かかりつけの内科で普通に聴診器をあてられて、もっと強い薬を出そうかと先生がおっしゃっていました。しかし、前日に彼自身で弱い指の力を振り絞って「歩行ができなくなった」「力がはいらない」とネットで検索すると「ギランバレー症候群」がヒットし、もしかしたら…と頭をよぎっていたため、先生に「ギランバレー症候群ではないのですか?」と言うと、先生の表情が変わりました

【2】検査は簡単だけど、とにかく急ぐこと

(1)膝蓋腱反射検査

ひじやひざに思いトンカチのようなものをトントンと当て、通常なら反射で足などがピクッと勝手に反応すします。

この反射がまったくないことがわかりました。その為、大学病院への紹介状をいただき、今すぐに行くように言われました。弱った体なのに、なぜ先生が今すぐ行くようにと言われたのか、後にわかりました。この病気は進行がとても早く、いかに進行を早い段階で止めるかが治療のカギなのだそうです。

(2)神経伝導速度検査

伝導できていませんでした。紹介先の大学病院では手の数か所に通電するシールを貼られ、体の神経の反応を検査されました。すると通電の痛さはあるのに、体はまったくピクリともしません。そしてやはり先生から「全く神経が反応していないですね。」と言われました。その大学病院ではベッドの空きがないという理由で、適切な処置ができる病院探しをすることになり再び違う病院を受診することになりました。この日に内科→大学病院→専門病院と弱った体で、病院のはしごをすることになりました。

【3】専門病院での検査と治療

有名な病院の脳神経外科を紹介されました。急性期医療ができてギランバレー症候群の対応には速やかな診断と透析センターとの連携で、有効な免疫グロブリン大量療法(1000人を超える献血者から抽出された有効成分)が入院当日より点滴可能な大きな病院でした。それが幸いでした。先生は「恐らくギランバレー症候群であろう」という前提で、検査をすすめられました。

(1)髄液検査

背中から骨髄液を採取し蛋白の上昇などの検査をします。彼は髄液採取中には背骨を取られるのではないか?と引っ張られるような猛烈な痛みを訴えていました。そして終了後もあおむけで2時間背中をつけっぱなしでベッドに寝ていなければならず辛そうでした。しかしそのころ既に何でもいいから早く元に戻してほしいと、辛いとか痛いとかはどうでも良くなっていたようです。意識が薄くなっていました。

(2)神経伝導速度検査

大学病院と同じように手に通電させて全身の反射を検査しました。しかしピクリとさえしません。

(3)握力検査

ギランバレー症候群は運動神経が伝達しなくなる病気なので手に力を入れようとしても入らず、結果はラガーマンなのに1未満…ゼロに近い握力でした。彼も周囲も不安になるしかありませんでした。入院即日から免疫グロブリン大量療法点滴が始まりました。

 【4】特に効果を実感している治療方法は「成分輸血」

免疫グロブリン大量療法(点滴)は5日連続で行われました。早期に進行を止めるのがカギである為、この療法を早く開始できたのが幸いでした。輸血と言っても献血者から抽出した成分の為、赤色の血液ではなく見た目は透明です。治療はこれだけです。点滴中は同じ態勢なので手や背中を動かしたくなりますよね。しかしこの時は運動神経が麻痺しているためできず、そしてテレビを見ようにも目があまり動かせない為、ただ天井をみているしかなかったそうです。

副作用がありました。体から汗が排出されなくなり、手足に発疹ができてかゆくなります。それには、かゆみ止めの薬を服用しました。

先生は彼には黙っていましたが母親である私には「握力1ですが今からもっと弱くなります。まだ進行の過程です。輸血は連続して行っていきますがまだ安心できません。人によっては自発呼吸ができなくなることもあり、死に至ることもまれにあります。」と大変恐ろしいことを伝えていました。

その言葉通り、最初の1週間ほどは日に日に弱っていき、ずっとベッドに横になっていました。そして輸血が終盤になったころに症状が止まった気がしました。おしゃべりになってきたのです。といっても、まだ小さくゆっくりですが、もともとおしゃべり屋さんなので一番に口が動いたのでしょう。

病院の点滴イメージ

4)治療中の体験談と治療のポイント

【1】手術について

この病気には手術はありません。早期に輸血点滴が5日間続けられるのみでした。

【2】筋肉を動かす訓練

点滴がなくなってからは、特に治療はありませんでした。とにかく筋肉を動かす指令を送ってみるとか、頑張って食事をしてみるなどを先生から指示されました。

3週間ほどは、お箸を握れませんでした。最初はスプーンですら持てないのです。看護師さんや家族に「あ~ん」と口に運んでもらうのですが、今度は飲み込むにも筋肉への運動神経指令がなかなか行かず飲み込めません。口の中でどうやっていいのか分からない状況になり、一度の食事に1時間ほどかかりました。ですから食事はとても苦痛で疲れていました。その為、もともと77kgの体重だったのが1週間で65kgと、12kgも減ってしまいました。

歩くのは車いすを押してもらいます。気分転換に寒い中、散歩や売店に連れて行ってもらったりしましたが、自分で車いすを押す力はありませんでした。

3週間目に握力が5に戻りました。ラガーマンが5で喜んでどうする?って思うのですが、彼もこれから先どうなるのか不安だったので「元の自分に戻れるかもしれない勇気」が湧いてとてもうれしかったようです。

入院時は幸い大学が春休み中でした。しかし歩けないとか握れないという状況だと4月から大学に行けるだろうかと彼も私も心配していました。結果、実は1ケ月間の入院生活と1ケ月の自宅リハビリで、およそ元の体に戻りました。これには先生も驚いていました。通常6ケ月以内に運動神経が戻ればよいのだそうですが、とても早い回復でした。普段から筋肉を使っている人は回復力も早いのだそうです。確かに彼はラグビーを毎日やっていましたから、運動神経は発達していた方だと思います。

【3】通院頻度・回数・通院内容とは?

普段からあまり運動をしない人は、リハビリ施設があるところへ転院するそうですが、彼はダンベルをしたり走ったりと普段から運動して筋肉を使う方法を知っていたので転院や通院はせずに自宅で過ごしました、

 【4】医師から言われているリハビリのポイント

「いきなり外を走って転んではいけないので、家の中で良いから毎日動いてください。そして疲労が早いのでいつもの感覚でやらず、やりすぎない事」と言われました。

 【5】治療中の生活で特に大変だったこと

最初の5日間の点滴中は動けないことが辛く、意識はしっかりしているのにシャワーの時に彼自身で体を洗うことができないのが辛かったそうです。回復中は、ラグビーをせず病院にいなければならないのも辛かったと言うのですが、本当に呼吸困難に陥って治療している人に比べたら、幸せすぎることです。

 【6】治療期間での失敗談

早く家族が気づいてあげられれば良かったです。咳をしているので隔離部屋にしていて、まさかこんな病気だと思わず、あと1日でも早く診察を受けさせていればよかったです。

とにかく、「筋肉が動かなくなる」とか「どうやって動かしてよいか分からない」など、意味不明な状況を感じたら、この病気を疑って受診してほしいです。また、ただの風邪だと思われないように病名を頭においておくのも大切だと思います。

患者の手とナース

5)私たち家族のサポートについて

【1】自宅でのサポート

彼の入院中の食事は誰かが介助していました。あ~んと口に食事を運んであげても、口を閉じる筋肉が緩いのでよだれのようにたらします。まるで赤ちゃんです。回復期にはリハビリの為に周囲の人が一緒に指遊びや足をばたばたさせるなどすると良いと思います。

大学はちょうど年度末試験が終わった後の発症で、治って4月には通学できたので何も支障は出ませんでした。幸運すぎます。

【2】予防において毎日の生活習慣で特に大切だと思うこと

 (1)食生活:鳥刺しなど生肉はできれば食べない。

 (2)入浴:症状があるときには、溺れる可能性もあるので介助や注意をする。

 (3)運動:普段より運動を行っている人は回復も早いそうです。

【3】具体的に完治までどの程度のお金がかかった?

入院中に看護師から彼に「この点滴は成分輸血だからとても高価で保険適用しなければ全部で900万ぐらい必要なの。親が健康保険料を払っているから治療を受けられた(3割負担で済んだ)けど、保険料を払っていない人は治療を拒否することもあるのよ。親に感謝してね。」と言われたそうです。

3割負担といっても、入院費自体は高額療養費申請(健康保険の制度)により一定の金額までの支払いで済んだ為、1ケ月の入院で27万程度の支払いしかしていません。

6)闘病生活を経て感じていること

現在、2年弱経過しましたが後遺症もなく、元気にラグビーをしています。ギランバレー症候群を多くの人に知ってもらい、もしも疑われる場合にはとにかく早期に通院してほしいです。

症状は色々あり、一番重いものでは自発呼吸ができず死亡してしまうことがあります。しかし、ごくまれなことであり、早期発見と治療を行えば怖い病気ではないと思います。珍しい病気の為、不安になると思いますが、治療方法があるので救いだと思います。

最後に、ギランバレー症候群について「これだけは知ってほしい」と思うことを伝えます。

【1】自分の体に体験したことのない症状があったらすぐに受診すること。

【2】早期治療に取り組む→早期に発見して気づくこと

【3】ギランバレー症候群は珍しい病気だが治療方法があるので、安心して経過を見守ること。

【4】適切な治療(今回のように有効成分の輸血など)ができる病院を紹介してもらうこと。

【5】健康保険に加入しておくこと。いつ聞いたこともない大病になるかわかりません。

まとめ

珍しい病気なので、まさかご自身に発症するなんて考えもしないでしょう。いつ何があるかわかりません。知っておくと恐れずに過ごすことができます。発症を疑ってこれをご覧になっている方などにも早期発見・早期受診につながれば良いと思ってお伝えしました。どうぞ恐れずに。早い回復につながりますよう願っています。

スポンサードリンク